【IR Re:DESIGNクロストーク】これからのIRに必要な「デザイン」とは?

情報を開示するだけでは不十分?投資家との新しい対話の形とは

情報が膨大化する今、IR資料は、もはや単なる情報開示の手段ではありません。
企業の構造的な強みや長期的な価値創造を“どう伝えるか”を設計するための重要なコミュニケーションツールへと進化しています。


その中で鍵を握るのが「デザイン」です。
デザインとは、見た目の装飾だけではなく、複雑な情報を構造化し、“伝わる形”に変える設計そのものです

今回は、CFOとして上場企業の現場を経験し、現在は多数のIRコンサルティングを手掛ける FiNX代表・後藤敏仁氏と、デザインの力で情報を行動につなげる Creative Logic代表・北島聡実が、「これからのIRにおけるデザインの可能性」を語ります。

「開示すれば伝わる」はもう通用しない──IR支援の現場から見える変化

後藤:近年のIR現場を見渡すと、情報量の急増により、“開示しただけでは伝わらない”という課題がますます顕著になっています。

上場企業数は2024年に4,000社を超え、加えて資本コストへの対応やサステナビリティ、人的資本といった新たな開示項目が次々と求められるようになりました。

図:上場企業数と求められるデータの変化
図:上場企業数と求められるデータの変化

北島:確かに、我々も「新しい開示情報に合わせてIR資料を刷新したい」という要望をいただくことが増えてきました。

後藤:こうした中で投資家の目を惹き、企業の本質的な価値を理解してもらうためには、単なる情報発信ではなく、戦略的な情報設計とストーリー性のある伝え方が不可欠になっています。

過去と同じやり方を踏襲し、ただ数字を並べるだけでは、「何が強みなのか」が伝わりにくい。
投資家は短期的な変化ではなく、構造的な強さを見ています。企業の“再現性ある成長構造”が明確に可視化できているか。

そうした「伝え方の設計」が、いま評価される時代になっています。

北島:後藤さんは投資家経験をお持ちなので、投資家の目線からIR資料のあるべき姿を提案されている印象があります。

後藤:そうですね。私もIR担当者の方が「投資家が何を重視しているのか分からない」と悩んでいるのをよく聞きます。

私が支援をする際は、最初に「投資家がどんなストーリーを好むか」「どのページで離脱するか」「どの数字で未来を想像するか」を一緒に整理していますね。
その視点で資料を再構築すると、同じ情報でも伝わり方がまるで違う

相手目線に立って設計する──IRで活きるデザインの考え方

後藤:投資家目線という視点でIR資料を再構築する必要がある中で、デザインの力が活きてくると考えていますが、北島さんはいかがですか?

北島:そうですね、私もデザインの考え方が役に立つ面は多分にあると考えています。

前提として、デザインの目的は、狙った人に、意図通りに伝えること
同じIR資料だとしてもどのような投資家に、何を伝えたいかでアウトプットは変わっていきます。

例えば、新規参入を検討している投資家に対して、企業の強みを伝えたいと想定すれば、最初の1枚で企業の全貌が理解できる「キースライド」を置くことが一つの解となります。

一方で、既存投資家に対して、前回との差分や推移を見せたいということであれば、当然前後の差分を明確に提示したり、強調したりすることが必要になってきます。

デザインの目的は、狙った人に、意図通りに伝えること。
図:デザインの目的は、狙った人に、意図通りに伝えること

後藤:なるほど。いま話を聞いていて思うのは、やはりデザインというのは“見た目を整えること”ではなく、「読み手がどう受け取るかを設計する考え方」なんですね。

投資家がどんな順序で資料を読み、どこで理解し、どこで離脱するか──。そこまでを想定して構成を組み立てるという意味で、デザインの発想はIRにとても親和性があると思います。

北島:まさにそうなんです。

デザインというと、どうしても「見た目をきれいにすること」と捉えられがちですが、私たちが意識しているのは「情報をどう設計すれば相手が迷わず理解できるか」という部分です。だからこそ、IR資料の中では、数字や文章の並び順、見出しの階層、グラフの構成といった“設計的な要素”が非常に重要になってきます。

後藤:確かに、投資家側から見ても、情報が整理されているだけで印象がまったく違う。どれだけ内容が良くても、伝わり方がバラつくと「この会社は整理されていないな」と感じてしまう。そういう意味では、デザインとは経営の理解を補完する“思考の構造化”でもありますね。

北島:そう思います。
数字や実績をどれだけ積み上げても、それが「伝わる構造」になっていなければ、価値は半減してしまう。そうした歩留まりを解消するのがデザインの役割だと考えています。

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実例紹介:理念から構造までを一貫して「伝わる形」に

後藤:いまの話を具体的なケースで考えてみましょう。たとえば、私たちが支援したクリエートメディックさんの事例があります。

もともとのIR資料のこちらのスライドは、経営理念・ありたい姿・数値目標がそれぞれ別々に存在していて、全体を見ても「この企業はどこを目指しているのか」が直感的に伝わりにくかったんです。

図:クリエートメディック決算資料より

北島:そうでしたね。そこで私たちは、このスライド1枚で会社の現状と将来構想、理念までが理解できるよう、一貫した構造で再設計しました。経営理念を軸に、「現状 → 中期の到達点 → 理念としての理想像」という流れを1枚で追えるようにしています。

投資家が“まずこの1枚で全体を理解できる”ことを目指して、構成とビジュアルを設計しました。

図:クリエートメディック決算資料より

後藤:そうでしたね。結果的に見やすくなった印象になりましたが、当初は我々も試行錯誤しましたね(笑)

北島:そうですね、それなりに工夫しながら何枚か作って、最終的に今の案に落ち着きましたよね(笑)正解がないからこそ、お互いにアイデアを出し合いながらベストな見せ方を考えていましたね。

これからのIRに必要な「デザイン」とは?

後藤:最後に伺いたいのですが、北島さんが考える、これからのIRに必要な「デザイン」とは何でしょうか?

北島:私は、「企業の価値を正しく理解してもらうための構造をつくること」だと思います。デザインというと見た目の話に思われがちですが、IR資料では“読み手がどう理解するか”を設計することが本質です。
複雑な情報を整理し、相手の目線で再構成する──その積み重ねが、結果的に信頼や共感を生み出します。

後藤:ありがとうございます。12月12日のIR Re:DESIGNイベントでは、即興でゲストのIR資料をデザインするというセッションも予定していますね。

北島:そうですね、当日はよろしくお願いします!今から緊張しますが…皆さんにデザインの力を体感していただけるよう、頑張ります!


日本初のIRカルチャーイベント

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