【2025】IR資料9選|CFO・IR担当者が選ぶ参考スライド
はじめに:CFO・IR担当者が選んだ「本当に参考になるIR資料」
2025年10月、日本金融経済研究所とログミー株式会社、FiNX株式会社が共同開催した「企業価値向上サミット2025」では、全国71社のCFO・IR担当者が「最も参考になるIR資料」を選出しました。ログミー株式会社からのアンケート協力依頼に71社が回答いただきました。

ご回答いただいた企業は中小型銘柄に分類される企業が多く、サンプルとして多少偏りはあるものの、現役のCFOやIR担当者が普段参考にしているIR資料(決算説明資料・統合報告書・中期経営計画など)を知る上で、とても参考になるデータとなりました。
アンケートでは、参考になるIR資料について1社以上挙げていただき、任意でその理由等についてもコメントいただきました。

上位に選ばれたIR資料9選+1
上場企業は4,000社近くあるため、71社から挙げられたIR資料の多くは分散しており、複数の方が選んだものは7社+1という結果となりました。
- SHIFT(証券コード:3697):5票
- GENDA(証券コード:9166):3票
- TDK(証券コード:6762):2票
- 地主(証券コード:3252):2票
- マネーフォワード(証券コード:3994):2票
- 旭化成(証券コード:3407):2票
- 伊藤忠商事(証券コード:8001):2票
- 双日(証券コード:2768):2票
- 日本瓦斯(証券コード:8174):2票
そして、番外編としては、東証の好事例集を挙げられている方も複数いらっしゃいました。

1. SHIFT(証券コード:3697):5票



SHIFTは、M&Aによる成長戦略を掲げており、毎年のようにM&Aを実施している会社ですが、いまだにエンジニア稼働率、エンジニア単価、エンジニア数、など、シンプルなKPIで分解しています。見る側としては、非常にシンプルでわかりやすいですが、作る側にとってはすべての連結対象企業を同一KPIにして正しく評価しなければならず、割と大変な作業です。
その他のブレークダウンKPIの見せ方や、ロジックツリーで分解して説明する手法はとても参考になります。IRのためにデータをとっているというより、普段の経営管理で意識しているからこそここまでデータを開示できるのだと思います。
2.GENDA(証券コード:9166):3票



GENDAもM&Aによる成長戦略をメインにしている企業ですが、投資家とのコミュニケーションにより、投資家が気になるであろうことを先回りしてスライドで説明するスタンスが非常に素晴らしいです。
たとえば、業績予想で2期先を開示していますが、これはM&Aがメインであるが故の業績予想の難しさや、連結取り込み後の業績寄与度を読みやすくする狙いが感じられます。単純にスライド構成やデザインそのものよりも、”投資家に伝えるべきポイントは何か”という視点が非常にしっかりと考え込まれた上で作られています。
3.TDK(証券コード:6762):2票



TDKは、統合報告書や中期経営計画を評価する声がありました。
図示しているスライドは、企業価値向上に関するシンプル化した分解です。TDKほど大きな企業になり、複数の事業ポートフォリオを抱えていると、おそらくシンプル化することにはある程度の大胆さや切り捨てる考え方がないとできません。「投資家に伝えるべきことは何か」という視点でシンプルに集約しているところがわかりやすいですね。
また、事業ポートフォリオに対するミニマムハードルレートの考え方や、各事業ポートフォリオを3年後にどのようなポジションに持っていきたいのかといった中長期の考え方が伝わってくるスライドもとても参考になる開示の仕方です。
4.地主(証券コード:3252):2票



地主は、ビジネスモデルが特徴的な企業です。 不動産事業でありながら、土地のセール&リースバックによるストックビジネスであることをシンプルかつ分かりやすい図解で伝えていることや、本来の不動産系事業とは異なりストックビジネス的な業績成長を意識したグラフ推移の見せ方を行なっています。
決算説明資料全般において、図解による説明やグラフを活用した見せ方が、伝えたいことに対して適切な表現になっているところが参考になります。
5.マネーフォワード(証券コード:3994):2票


マネーフォワードの決算説明資料は、シンプルなARRの推移や客数×ARPAの見せ方が参考になります。グループ全体の事業成長とKPIの分解との整合性が、ストーリー的に分かりやすい表現になっています。
マネーフォワードもM&Aによりさまざまな企業・サービスを持っていますが、それらを個別に開示するというより、SHIFT同様にシンプルに全体のARR推移などで表している点が投資家にとっては分かりやすいですね。
6.旭化成(証券コード:3407):2票



旭化成は、大企業として複数の事業ポートフォリオを抱えている中で、事業ポートフォリオの構造転換の打ち出し方や、中長期の成長において経営が注視しているKPIとしてROICや営業利益率といったポイントに敢えてしっかりフォーカスした見せ方により、経営の考え方が伝わってきてとても参考になります。
M&A後の企業における利益成長グラフの見せ方についても非常に参考になります。
7.伊藤忠商事(証券コード:8001):2票




伊藤忠商事は、統合報告書が評価対象として選ばれています。
伊藤忠の統合報告書は、全般において経営哲学がメッセージとして伝わってくる内容になっています。どういう経営哲学(考え方)に基づいて、「何をどう判断しているのか」あるいは「判断しようとしているのか」という点が非常にクリアに伝わってくることが特徴的です。創業来の考え方を現代にアジャストさせながら語るストーリー展開は、不易流行といった言葉が相応しく、歴史ある会社ならではの迫力を感じます。
日本を代表する商社として、事業サイズが大きく、事業ポートフォリオも多岐にわたることから、個別の状況を示していくことよりも基本的な経営スタンスとその結果としてのトラックレコードに向き合うスタンスが分かりやすい内容となっています。
8.双日(証券コード:2768):2票


双日は、決算説明資料からの抜粋です。決算説明資料でありながら、しっかりと「双日らしい成長ストーリーの実現」というパートでしっかりと経営方針やスタンスが伝えられています。
注目すべきポイントは、シンプルな図解やグラフ表現だけではなく、文字フォントの大きさや色を変えたハイライトのさせ方。伝えたいことにフォーカスして、大事なことが一目見ただけで読み手にインストールされるように細かな工夫や配慮がしっかりされています。資料作成チームのクオリティと情熱が感じられます。
9.日本瓦斯(証券コード:8174):2票




日本瓦斯は、統合報告書からの抜粋です。IR資料としてはかなり大胆なデザイン表現になっています。イラストが多用されており、まるでマンガのような動きのあるスライドが目を惹きます。
個性的な表現もさることながら、ROE15%→22%へと意欲的な資本効率を目指すスタンスが打ち出されています。「資本戦略とは、株主還元を指すものではなく、株主資本のパフォーマンスを最大化する戦略と考えています」というメッセージが非常に刺さります。
単に自社株買いや増配ということではなく、中長期的な資本効率の改善を打ち出し、投資家の共感を得ています。
その他評価された企業一覧

複数票入らなかったものの、参考になると回答された企業の一覧についても掲載しておきます。
- ANAホールディングス
- Avic
- COVER
- FCE
- HENNGE
- LIXIL
- MUFG
- SGホールディングス
- TOTO
- Unerry
- アイホン
- アサヒグループホールディングス
- アズーム
- あすか製薬
- アステラス製薬
- いつも
- インフロニア・ホールディングス
- ウイングアーク
- エイチーム
- エフ・コード
- オーエスジー
- オリックス
- オロ
- キャノン
- くすりの窓口
- クリエイト・レストランツ・ホールディングス
- コマツ
- コンコルディア・フィナンシャルグループ
- 三和
- ジェコス
- スパイダープラス
- スマレジ
- ソフトバンクグループ
- テクノプロ・ホールディング
- トーセイ
- トビラシステムズ
- トヨタ自動車
- トリドール
- ファーストブラザーズ
- プログリット
- プロシップ
- ベイカレント
- ヘリオス
- ホーチキ
- マクビープラネット
- ミネベアミツミ
- メガバンク全般
- メタウォーター
- ヤマトホールディングス
- 雪国まいたけ
- レゾナック
- ロイヤルホールディングス
- 塩野義製薬
- TWOSTONE&Sons
- ETSグループ
- JPホールディングス
- JRC
- SUMCO
- オリエンタルランド
- コレック
- ソラスト
- デジタルガレージ
- ワンキャリア
- 東名
- 関通
- 丸紅
- 久光製薬
- 協和キリン
- 栗田工業
- 三井物産
- 三菱化工機
- 三菱商事
- 三菱地所
- 住友化学
- 住友商事
- 住友不動産販売
- 信越化学工業
- 東京エレクトロン
- 東京ガス
- 東京建物
- 日華化学
- 日本ヒューム
- 日本情報クリエイト
- 日立建機
- 日立製作所
- 飯田グループホールディングス
まとめ
本記事では、CFOやIR担当者が実際に参考になると評価したIR資料をもとに、効果的な情報開示のポイントを整理して解説しました。上位に選ばれた企業は、いずれも単にデザイン性が高いだけでなく、「投資家に何を伝えるべきか」を明確に定義し、経営戦略やKPIをシンプルかつ一貫性のある形で表現しています。
わかりやすいIR資料は、投資家の理解を深めるだけでなく、企業の経営方針や成長ストーリーを的確に伝える手段です。特に、複数事業を展開する企業ほど、情報をどのように整理し、何を中心に据えて見せるかが、企業価値の伝達力を左右します。
IR資料は「開示義務」ではなく「戦略的コミュニケーション」です。自社の強みや哲学をどう表現するかを意識することで、投資家との信頼を築き、長期的な企業価値向上につなげることができます。
当社FiNXでは、IR資料の企画からデザイン・翻訳までを一貫して支援し、貴社の価値を正しく伝えるための最適なソリューションを提供しています。企業ごとの戦略やフェーズに合わせた設計により、情報の正確性、デザインの統一感、メッセージの明確化を図ることが可能です。今こそFiNXとともに、「伝わる資料作り」の第一歩を踏み出しましょう。