【2026年版】スタンダード市場にも波及|東証フォローアップ対応とCFO・IR実務完全ガイド

スタンダード

スタンダード市場は今、静かな転換点を迎えています。 グロース市場の上場維持基準見直しにより、スタンダード市場が「名実ともに中心的な市場」となることが見込まれる中、東証は2025年から資本コストや株価を意識した経営のフォローアップを本格化させています。開示率は約5割にとどまり、プライム市場(9割超)と比較して対応が遅れているのが現状です。

本記事では、JPXの公式資料と日本経済新聞の報道をもとに、スタンダード市場上場企業のCFO・IR担当者が2026年に取り組むべき実務対応を徹底解説します。

スタンダード市場の現状:「中心的な市場」への期待と課題のギャップ

市場の位置づけの変化

スタンダード市場は2022年4月の市場再編で誕生し、「公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」と位置づけられました。

2025年12月末時点で1,569社が上場し、市場再編時(1,466社)から増加傾向にあります。特に2025年は、プライム市場やグロース市場から35社がスタンダード市場に移行し、前年の4倍超となりました。グロース市場の上場維持基準見直しにより、今後スタンダード市場への流入がさらに増加することが予想されています。

深刻な開示の遅れ

しかし、東証が2023年3月から要請している「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、2025年12月末時点でスタンダード市場の開示率は約5割(785社/1,569社)にとどまっています。これはプライム市場の9割超と比較して大幅に遅れている状況です。

未開示企業の特徴を分析すると、以下の傾向が明確に現れています。

  • 時価総額が小さい企業:40億円未満の企業では開示率が35%にとどまる
  • 大株主が存在する企業:親会社(上場・非上場)や支配株主を有する企業では開示率が低い
  • 流動性が低い企業:1日あたりの売買代金中央値が1,600万円と、機関投資家が投資しにくい水準

投資家から指摘される3つの課題

東証フォローアップ会議では、機関投資家から以下の課題が指摘されています。

第一に、資本市場との向き合い方の問題です。

「時価総額数十億円の企業は機関投資家も入りにくいので、資本市場と向き合う必要性を感じにくい。同業他社と比べて見劣りしなければ良いというところに留まり、企業価値向上に向けた本質的な取組みに繋がっていない」という声が聞かれます。

第二に、少数株主保護の問題です。

「流動性が低く、大株主の存在により、少数株主保護やその他の問題を改善させる牽制が効きにくくなることが大きな問題」との指摘があります。実際、親会社と比較して子会社はROEの水準も低く、資本コストを意識した経営も進んでいないケースが多数見られます。

第三に、上場責任の問題です。

「上場会社としての上場責任が果たされていない懸念があり、市場運営者として一般株主や投資者を保護する観点から、こうした問題を放置すべきではない」という厳しい意見も出されています。

東証の対応方針:企業を4つの類型に分類

2025年11月に示された新たなアプローチ

東証は2025年11月13日のフォローアップ会議(第24回)で、スタンダード市場上場企業を4つの企業群に類型化し、それぞれに応じた対応を行う方針を示しました。

【企業群1】株主・投資家目線で企業価値向上に積極的に取り組む企業

  • 対応:積極的に取り組む企業が適切に評価される環境の整備(事例集など)
  • 対応:機関投資家とのコミュニケーションの促進

【企業群2】株主・投資家目線で企業価値向上に取り組む重要性は認識しているものの、検討・実行に課題のある企業(人材不足、投資家の目線が社内で浸透しないなど)

  • 対応:課題を乗り越えた他社の取組事例の紹介
  • 対応:経営者や独立社外取締役の啓発(セミナー、投資家との対話推進など)

【企業群3】株主・投資家目線で企業価値向上に取り組む意識があまりない企業

  • 対応:株主・投資家を意識して企業価値向上に取り組むうえで必要な流動性(公開性)の確保

【企業群4】少数株主保護などの観点で懸念がある企業

  • 対応:具体的な場面について対処(上場子会社・関連会社の少数株主利益の棄損、ファミリー企業・オーナー企業における問題、上場後の事業内容の大幅な変化など)

この類型化により、東証は画一的な対応ではなく、企業の実態に応じたきめ細かい施策を展開する方針です。

IR体制整備の義務化

2025年7月から、スタンダード市場を含む全上場企業に対してIR体制整備の義務化がスタートしました。これにより、中小型株を中心に、IR担当者の育成やIR活動に関与する部門の協力体制の強化など、IR関連の取組みを始めたり補強する動きが見られています。

2026年1月時点で押さえるべき5つの重要変化

1. 経過措置終了による上場維持基準の本格適用

2025年3月から、市場再編時の経過措置が終了し、本来の上場維持基準が適用されています。2025年7月9日時点で、スタンダード市場において上場維持基準に適合していない企業は102社にのぼり、特に「流通株式時価総額」や「流通株式比率」の未達が多くを占めています。

基準未達企業は、原則として1年間(売買高基準に関しては6か月間)の改善期間に入り、改善期間内に基準に適合しない場合は監理銘柄・整理銘柄(原則として6か月間)に指定後、上場廃止となります。2026年以降、この上場廃止プロセスが本格化します。

2. グロース市場からの流入増加

グロース市場の上場維持基準が「上場5年経過後に時価総額100億円以上」に引き上げられることで、スタンダード市場への移行を検討する企業が増加しています。

実際、2025年12月の規則改正で、スタンダード市場への移行時の利益基準(1億円以上)が撤廃され、時価総額40億円以上であれば利益が出ていなくても移行申請が可能になりました。

この変化により、スタンダード市場は「グロース市場からの受け皿」というネガティブなイメージを持たれるリスクがある一方、実力のある成長企業が集まる市場としてのポテンシャルも高まっています。

3. 開示企業一覧表の継続的な更新

東証は2024年1月から、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表を毎月更新しています。2025年1月からは、以下の変更が加えられました。

  • 取組み状況に関するアップデートの開示が行われた場合、その日付を明示
  • 機関投資家からのコンタクトを希望する企業を明示
  • 「検討中」の企業への掲載期間を6か月に設定(積極的な検討を促す)

2026年1月からは、各社のコーポレート・ガバナンス報告書における開示内容も掲載されるようになり、企業間の比較がより容易になります。

4. 投資家の目線とギャップのある事例の公表

2024年11月、東証は「投資者の目線とギャップのある事例」を初めて公表しました。これは、上場企業が開示した内容について、投資家がどのような点を問題視しているかを具体的に示したものです。

よくあるギャップの例:

  • 現状分析に留まり、資本収益性の改善に向けた具体的な取組みまで議論が及んでいない
  • 市場規模自体が限定されている中で、成長ストーリーをどのように描くか課題となっている
  • 目標設定が抽象的で、達成に向けた道筋が不明確

5. 課題解決に向けた企業の取組み事例の公表

2025年12月26日、東証は新たに「課題解決に向けた企業の取組み事例」を公表しました。これは、「資本コストや株価を意識した経営」を推進する際に直面する課題(社内の意識改革・浸透、資本コストの把握・活用など)を解決してきた企業の具体的な取組みを紹介するものです。

CFO・IR担当者が今すぐ着手すべき7つの実務対応

1. 自社がどの企業群に該当するかを客観的に評価する

まず、東証が示した4つの企業群のうち、自社がどこに該当するかを客観的に評価しましょう。評価の視点は以下のとおりです。

評価項目確認ポイント
開示状況「資本コストや株価を意識した経営」について開示済みか
時価総額自社の時価総額レベル(40億円未満/40-70億円/70-100億円/100億円以上)
株主構成親会社・支配株主・その他の関係会社の有無
流動性1日あたりの売買代金、流通株式比率
ROE水準自社のROEが8%以上か
PBR水準自社のPBRが1倍以上か

この評価結果に基づき、東証がどのようなアプローチを取る可能性が高いかを予測し、先手を打った対応を検討します。

2. 資本コストと資本収益性の現状を正確に把握する

未開示企業は、まず自社の資本コストと資本収益性を正確に把握することから始めましょう。東証が推奨する分析手法は以下のとおりです。

株主資本コストの算出では、CAPM(資本資産評価モデル)を用いた計算を行います。具体的には、リスクフリーレート、市場リスクプレミアム、自社のベータ値を設定し、株主資本コストを算出します。好事例企業の多くは、算出モデルやパラメータの設定内容も開示しています。

資本収益性の多面的な分析では、ROE、ROA、ROICなどの指標について、時系列分析、同業他社比較、要素分解(デュポン分析など)を実施します。PBRが1倍未満の企業は、その要因をROEとPERに分解し、さらにROEを当期純利益率、純資産回転率、財務レバレッジに分解することで、具体的な改善ポイントを特定できます。

市場評価の分析では、PBR、PER、株価推移について分析を行います。PBRが1倍を上回っている企業でも、市場平均や同業他社との比較により、さらなる改善の余地を特定することが重要です。

3. 取締役会で現状分析と改善計画を策定する

資本コストや資本収益性の現状分析は、単なるIR資料作成の作業ではありません。取締役会で現状を分析・評価し、改善に向けた計画を策定することが東証から要請されています。

取締役会での議論すべき項目:

  • 自社の資本コストと資本収益性の水準は適切か
  • PBRが1倍未満の場合、その要因は何か
  • 資本収益性を改善するための具体的な施策は何か
  • バランスシートは効率的な状態か(余剰現預金、政策保有株式、低収益事業など)
  • 事業ポートフォリオの見直しは必要か
  • 資本コストを低減させるために何ができるか

4. 改善に向けた取組みを具体的に開示する

取締役会で策定した改善計画を、投資家にわかりやすく開示します。東証が推奨する開示内容は以下の通りです。

  • 現状分析の開示:資本コスト、資本収益性、市場評価の現状を数値とともに示します。
  • 改善目標の設定:ROE、ROIC、PBRなどの目標値と達成時期を明示します。目標設定にあたっては、株主・投資家の期待を踏まえることが重要です。
  • 具体的な取組み:目標達成に向けた具体的な施策を列挙します。成長投資、事業ポートフォリオの見直し、資本効率の改善、資本コストの低減など、多面的な取組みを示すことが期待されています。
  • 取組みと目標の紐づけ:各取組みがどのように目標達成に結びつくのかを、ロジックツリーなどを用いて視覚的にわかりやすく説明します。

5. IR体制を強化し、投資家との対話を増やす

スタンダード市場企業の多くは、IR体制が脆弱であることが課題となっています。2025年7月のIR体制整備義務化を契機として、以下の点を強化しましょう。

  • IR担当者の明確化と育成:専任のIR担当者を配置し、必要なスキルを習得させます。
  • 社内連携体制の構築:経営企画、財務、総務、広報など、IR活動に関与する部門の協力体制を強化します。
  • 投資家との対話機会の創出:決算説明会の開催、機関投資家との個別面談、個人投資家向け説明会などを積極的に実施します。
  • 対話の実施状況の開示:コーポレート・ガバナンス報告書の「IR活動状況」欄に、直近の説明会・面談の実施状況と今後の方針を具体的に記載します。

6. グループ経営の観点から資本配分を見直す

親会社・支配株主を有する企業(上場子会社)は、グループ全体での資本配分の最適化という観点からの開示が特に重要です。

2025年冬には、東証が「グループ経営等に関する開示のポイントと事例集」を公表する予定です。この事例集では、「資本コストや株価を意識した経営の実現」の要請も踏まえ、中長期的な企業価値向上や資本効率の観点から、グループ経営の在り方を検討・開示している事例にフォーカスされる見込みです。

上場子会社のCFO・IR担当者は、以下の点を検討・開示することが求められます。

  • グループ全体と個社の企業価値向上の関係
  • 親会社との取引の合理性・透明性
  • 少数株主利益への配慮
  • 上場を維持する意義

7. 継続的なアップデートのサイクルを確立する

「資本コストや株価を意識した経営」は、一度開示して終わりではありません。投資家との対話を通じてフィードバックを得ながら、継続的に取組みをブラッシュアップし、開示をアップデートしていくことが期待されています。

アップデートのサイクル:

  • 年次:取組みの進捗状況、目標の達成状況を開示
  • 半期:主要なKPIの進捗状況を開示
  • 四半期:投資家との対話で得られたフィードバックを経営に反映

開示をアップデートした企業は、東証の開示企業一覧表で「開示内容のアップデート日」が明示され、積極的に取り組む企業として認識されます。

東証が評価する13社の具体的な取組事例

東証は2024年11月に「投資者の視点を踏まえた対応のポイントと事例(スタンダード市場編)」を公表し、13社の好事例を紹介しています。以下、特に注目すべき企業とその評価ポイントを列挙します。

【資本コストの把握と目標設定】

  • テクノスマート(6246)は、株主資本コストの算出モデルやパラメータの設定内容を詳細に開示し、ROEや株主資本コストの時系列分析を実施しています。さらに、事業運営に必要な現預金の水準を検討したうえで、余剰現預金の状況や今後の営業キャッシュフロー見通しを踏まえた将来的なキャピタルアロケーション方針を策定している点が評価されています。
  • 九州リースサービス(8596)は、CAPMによる株主資本コストの試算だけでなく、市場期待水準の株主資本コストとそれらのギャップの認識を示し、ROE改善やIR等の取組みに繋げています。市場と真摯に向き合う姿勢が投資家から高く評価されています。

【現状分析の深度】

  • 三菱食品(7451)は、PBRは1倍を上回るものの、市場平均・同業他社との比較などによる分析により課題(PER向上)を特定しています。CAPMによる株主資本コストの試算だけでなく、ヒアリングベースでの投資家の期待リターンや、ギャップの認識についても開示しており、投資家の目線を踏まえた多面的な分析が評価されています。
  • ヒビノ(2469)は、資本収益性・市場評価に関する各種指標について、時系列の分析や要素ごとに分解した分析を実施。PBRが1倍を上回っていても、さらなる向上に向けた分析を丁寧に行い、取組みを分かりやすく説明しています。特に、サステナビリティマネジメント、コーポレートガバナンス向上、IR・PRといった非財務の取組みを通じて株主資本コストの抑制を図る姿勢が評価されています。
  • フィンテック グローバル(8789)は、ROEについて時系列の分析や要素ごと(デュポン分解)の分析を実施し、株主資本コストとWACCについて比較対象となる資本収益性の指標と比較しています。資本コストを上回る資本収益性を達成していても、市場評価について分析・評価を行い、課題を把握している点が好事例として紹介されています。

【具体的な取組みと目標の紐づけ】

  • ウイルプラスホールディングス(3538)は、PBR1倍で満足せず、さらなる向上に向けて積極的に取組みを進めています。ロジックツリーを用いて各取組みがPBR向上にどう繋がるかを示したり、目指す資本構成を端的に示すなど、目指す姿や具体的な取組みが理解しやすい開示を行っています。また、自社株式を政策保有する株主から立会外取引を通じて自己株式を取得し、取得した株式を取締役及び従業員向けの株式報酬制度に活用している点も評価されています。
  • カンロ(2216)は、ROIC経営を全社的に浸透させるべく、ROICを分解して各部門のKPIに落とし込むなど、社員の意識向上を推進しています。ROICツリーを用いて、部門レベルでのKPIがROIC向上にどう結び付くのかを明示することで、経営陣が主体となり全社的な取組みとしてROIC経営を推進している姿勢が評価されています。

【キャピタルアロケーションと事業ポートフォリオ】

  • ダイハツディーゼル(6023)は、キャピタルアロケーションの基本方針を具体的に提示したうえで、配当方針や成長投資計画を開示しています。配当方針や成長投資計画と一体となってキャピタルアロケーション方針が示されており、資本をどのように活用していくかがよく理解できる点が評価されています。
  • 新家工業(7305)は、ポートフォリオ管理に対する考え方を示し、全社視点での経営資源の最適化を図っています。さらに、中長期的なキャピタルアロケーション方針を策定・開示するとともに、資産圧縮(政策保有株式の売却)により得た資金の使い道についても言及しており、事業ポートフォリオの見直しを進める本気度が伺える開示となっています。
  • 日邦産業(9913)も、事業ポートフォリオに関する方針の中で、縮小・撤退の考え方について明示しています。成長に貢献しない・貢献が見込めなくなる事業からの縮小・撤退を図るとの言及があり、見直しの本気度が評価されています。加えてIR強化や英文の情報開示に係る施策も掲げられており、市場との対話による企業価値向上に向けた取組みの加速が期待されています。

【役員報酬制度の設計】

  • 日東富士製粉(2003)は、企業価値の持続的向上を図るインセンティブを付与するため、中期の財務KPI(基礎収益力・基礎収益ROA)に紐づけた業績連動型の役員株式報酬制度を導入しています。投資家にとって、経営者のインセンティブがどのように設計されているかは非常に重要なポイントであり、ROA等を経営目標に掲げるだけでなく、当該指標の実績と連動した役員株式報酬制度によって中長期的な企業価値向上に向けた健全なインセンティブ付けがされている点が評価されています。

【株主・投資家との対話】

  • 三菱食品(7451)は、IR室の体制強化に加え、株主とのエンゲージメント強化、英文開示早期化などの各種取組みを推進しています。対話の主なテーマに加え、成果につながった対話の具体的な事例やそれを踏まえた取組み状況などを詳細に開示しており、対話を通じた取組みのブラッシュアップが行われていることが明確に示されています。

【深掘り考察:好事例企業に共通する4つの特徴】

これらの好事例企業を分析すると、4つの共通点が浮かび上がります。

第一に、「投資家の視点」を徹底的に意識しています。

単に自社の都合で目標を設定するのではなく、株主資本コストや市場評価を踏まえた目標設定を行っています。三菱食品のように、ヒアリングベースでの投資家の期待リターンまで把握している企業もあります。

第二に、「取組みの具体性」を重視しています。

抽象的な方針ではなく、具体的な数値目標、実施時期、担当部門、KPIなどを明示しています。ウイルプラスホールディングスのロジックツリー、カンロのROICツリーなど、視覚的にわかりやすい説明ツールも活用されています。

第三に、「バランスシートの効率化」に踏み込んでいます。

単にPLの改善だけでなく、余剰現預金、政策保有株式、低収益事業など、バランスシート上の非効率な資産の見直しに言及しています。新家工業の政策保有株式売却、ウイルプラスホールディングスの自己株式取得と株式報酬への活用など、具体的なアクションを伴っています。

第四に、「継続的な対話とアップデート」を実践しています。

一度開示して終わりではなく、投資家との対話を通じて得られたフィードバックを経営に反映し、開示をアップデートしています。三菱食品のように、対話の具体的な成果事例まで開示している企業もあります。

これらの取組は、時価総額や業種を問わず、スタンダード市場のあらゆる企業が参考にできる内容です。特に、「投資家との対話を通じた継続的な改善」というサイクルを確立することが、長期的な企業価値向上の鍵となるでしょう。

経過措置終了への実務対応

改善期間入りのリスク評価

自社が上場維持基準に適合しているかを確認し、未達の場合は改善計画を早急に策定する必要があります。特に以下の基準について注意が必要です:

  • 流通株式時価総額:10億円以上
  • 流通株式比率:25%以上
  • 売買高:月平均10単位以上

市場変更の検討

上場維持基準への適合が困難な場合、他の市場区分への変更も選択肢となります。2025年12月の規則改正により、グロース市場からスタンダード市場への移行時の利益基準が撤廃されたことで、グロース→スタンダードの移行ハードルが下がりました。

逆に、スタンダード市場の企業がグロース市場への移行を検討することも理論上は可能ですが、グロース市場の新上場維持基準(上場5年経過後に時価総額100億円以上)を考慮すると、現実的な選択肢ではないケースが多いでしょう。

2026年の市場環境変化とスタンダード市場の未来

PBR・ROEの改善傾向

東証の分析によると、「資本コストや株価を意識した経営」の要請前後(2022年7月~2025年7月)で、スタンダード市場のPBR・ROEには以下の変化が見られます:

  • PBR1倍割れ企業:59%(要請前)→ 54%(要請後)【-5pt改善】
  • ROE8%未満企業:59%(要請前)→ 55%(要請後)【-4pt改善】

改善の動きは見られるものの、プライム市場と比較すると改善幅は小さく、まだ道半ばという状況です。

今後の規制強化の可能性

フォローアップ会議では、「少数株主保護が最後の砦・最低限の義務であり、それが守られているかどうかについて、東証としてしっかりとクオリティコントロールしていく必要」との意見が出されています。

今後、独立社外取締役の独立性基準の見直しや、流動性(公開性)確保のための上場維持基準の見直しなど、追加的な規制強化が検討される可能性があります。これらは、スタンダード市場だけでなく、プライム市場やグロース市場にも影響を及ぼす可能性があり、注視が必要です。

まとめ:2026年は「本気度が試される年」

スタンダード市場は、グロース市場の上場維持基準見直しにより「名実ともに中心的な市場」となる可能性を秘めています。しかし、それは自動的に実現するものではありません。各社が真摯に企業価値向上に取り組み、投資家との建設的な対話を重ねることで初めて、魅力ある市場として認識されるようになります。

2026年に優先的に取り組むべきアクションは以下の3点です。

  1. 3月末までに:自社の資本コストと資本収益性の現状分析を完了し、取締役会で改善計画を策定する
  2. 2026年上半期中に:「資本コストや株価を意識した経営」についての開示を行い(未開示企業)、またはアップデートする(開示済企業)
  3. 2026年中に:投資家との対話を増やし、フィードバックを経営に反映するサイクルを確立する

東証は、事例集の公表、機関投資家とのマッチング、セミナー開催など、上場企業をサポートする施策を展開しています。これらのリソースを積極的に活用し、「株主・投資家目線で企業価値向上に積極的に取り組む企業」として認識されることが、2026年の重要な目標となります。

スタンダード市場が、多様な企業が切磋琢磨し、持続的な成長を実現する市場として機能するために、各社の本気の取組みが求められています。


※本記事は2026年1月時点の情報に基づいて作成しています。最新の制度内容については、JPX公式サイトをご確認ください。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

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