【2026年版】プライム市場開示済み企業の9割が直面する”次の壁”|投資家が評価するアップデート事例集

プライム

プライム市場の「資本コストや株価を意識した経営」開示率は9割を超えました。 しかし、投資家からは「理解は進んでいるが、経営に反映させる意識は依然として希薄」「抜本的な取組みが実行に移されていない」という厳しい声が寄せられています。

開示の「量」から「質」へ。2026年、プライム市場上場企業が直面する”次の壁”とは何か。東証が多くの投資家との対話から取りまとめた最新事例集をもとに、投資家が真に評価するアップデートの実務を徹底解説します。

開示率9割超の”その先”に何があるか

数字で見るプライム市場の現状

2025年9月時点で、プライム市場の「資本コストや株価を意識した経営」に関する開示率は92%に達しました。うち6割以上がアップデートも実施済みです。2023年3月の要請開始から約2年半で、開示という点では一定の成果が出ています。

しかし、PBR・ROEの改善は道半ばです。東証の分析によると、要請前後(2022年7月~2025年7月)における変化は以下のとおりです。

  • PBR1倍割れ企業:50%(2022年7月)→ 44%(2025年7月)【-6pt】
  • ROE8%未満企業:47%(2022年7月)→ 43%(2025年7月)【-4pt】

改善傾向は見られるものの、依然としてプライム市場の約半数がPBR1倍割れという状況です。「開示はしたが、実際の企業価値向上には繋がっていない」企業が多数存在することを示唆しています。

投資家が感じる”変化”と”物足りなさ”

東証は多くの国内外機関投資家と意見交換を行い、その声を取りまとめています。投資家からは、肯定的な評価と厳しい指摘の両方が寄せられています。

【肯定的な評価】

「資本コストだけでなくROICやWACCの概念に関する経営者の理解が進んでおり、企業の意識変化を感じる。株主と企業の共通言語が形成されていることが評価できる」(国内機関投資家)

「数年前では考えられないほど、日本企業の資本コストや株価に対する関心が高まっている。また、多くの企業が投資家との対話を重視するようになり、IR・対話の質も着実に向上している」(海外投資家)

「要請の公表当初は、1年程で盛り上がりが終わるかと思ったものの、持続的な変化が起こっているように感じる。かねてより日本株の評価は割安だったが、今回は企業のクオリティが改善している印象」(海外投資家)

【厳しい指摘】

「企業経営者との面談を通じて感じるが、資本コストに対する理解は進んできている一方で、それをいかに経営に反映させるかという意識は依然として希薄である。例えば、ROICを用いた不採算事業からの撤退や、成長事業への資源配分といったドラスティックな経営判断がなかなかできていない」(国内機関投資家)

「株主還元が資本効率向上に向けた検討の出発点となっている企業が多く、自社株買いが増えている印象がある。余剰資金を払い出す手段としては良いものの、場当たり的な株主還元策は、株価に対して意味をなさなくなってきた」(国内機関投資家)

これらの声から浮かび上がるのは、「理解」から「実行」への移行が”次の壁”であるという現実です。


投資家目線とのギャップ:開示済み企業が陥りがちな8つの落とし穴

東証は2024年11月に「投資者の目線とギャップのある事例」を公表しました。開示済み企業が陥りがちな落とし穴として、以下の8つが指摘されています。

【現状分析・評価のギャップ】

1. 現状分析が表面的な内容にとどまる

資本コストやPBRの数値を示すだけで、その要因分析や課題の特定が不十分なケースです。投資家は、なぜその数値になっているのか、どこに改善の余地があるのかを知りたいと考えています。

2. 現状分析が投資者の目線とズレている

CAPMで算出した株主資本コストが投資家の期待リターンと乖離しているケースです。投資家からは「低い」と指摘されることが多く、市場の期待を正確に把握できていない可能性があります。

3. 目指すバランスシートやキャピタルアロケーション方針が十分に検討されていない

PLの改善には言及するものの、BS(バランスシート)の効率化については触れていないケースです。余剰現預金、政策保有株式、低収益資産などの見直しが不十分です。

【取組みの検討・開示のギャップ】

4. 取組みを並べるだけの開示となっている

既存の施策を羅列するだけで、各取組みがどのようにPBR向上に繋がるのかの説明がないケースです。投資家は、取組みと目標達成の因果関係を理解したいと考えています。

5. 目標設定が投資者の目線とズレている

株主資本コストを下回るROE目標を設定しているケースや、達成時期が不明確なケースです。投資家の期待を踏まえた目標設定になっていません。

6. 不採算事業の縮小・撤退の検討が十分でない

成長投資や株主還元には言及するものの、低収益事業や非効率な資産の見直しには触れていないケースです。「選択と集中」の本気度が問われます。

【株主・投資者との対話のギャップ】

7. 課題の分析や追加対応の検討を機動的に行わない

一度開示した後、アップデートを行わないケースです。市場環境の変化や投資家からのフィードバックを踏まえた見直しが期待されています。

8. 合理的な理由もなく、対話に応じない

 IRミーティングの機会を設けない、投資家からの問い合わせに適切に対応しないケースです。対話を通じた信頼関係の構築が不可欠です。

企業が直面する4つの課題と解決策

東証は2026年1月14日に「課題解決に向けた企業の取組み事例」を新たに公表しました。これは、上場企業から寄せられた「取組みを推進するうえで直面している課題」に対して、実際に課題を乗り越えた企業の具体的な取組みを紹介するものです。

課題①:社内の意識改革・浸透

よくある課題

  • 経営層がPL思考からなかなか抜け出せず、理解・支援が得られない
  • 経営層・取締役会において課題意識や危機感が希薄で、取組みの検討が進まない
  • 事業部門などではバランスシートへの意識が希薄で、会社全体への浸透に苦労している

課題を乗り越えた企業の取組み

  • 外部からの声(東証の要請や投資家の指摘・提案)を活用し、経営層・取締役会に働きかけ、課題意識を醸成、議論提起
  • ROICツリーを用いて各部門のKPIに落とし込み、社員一人一人が自分事として取り組める仕組み・環境づくりを推進
  • 社内報で各部署ごとの分かりやすい指標と目標数値を掲げ、全社的な浸透を図る

課題②:資本コストの把握・活用

よくある課題

  • CAPMで資本コストを算出したものの、投資家から「低い」と言われてしまう
  • 資本コストの水準について、社内での認識と市場の期待にギャップがある

課題を乗り越えた企業の取組み

  • CAPMに加えて株式益利回りやPERベースでも算出し、レンジとして提示
  • 投資家へのアンケートやヒアリングを通じて、市場期待水準を把握
  • サイズプレミアム(規模が小さい企業の株式に対して追加的に適用されるリスクプレミアム)を考慮

課題③:中長期的な資本政策の策定

よくある課題

  • 成長投資・株主還元・内部留保のバランスをどう判断すればよいか、判断基準や投資家の期待が分からない
  • キャピタルアロケーション方針を策定したいが、何から手を付ければよいか分からない

課題を乗り越えた企業の取組み

  • 中長期的に目指すバランスシートの姿を策定し、そこから逆算してキャピタルアロケーション方針を検討
  • 事業運営に必要な現預金の水準を検討したうえで、余剰資金の配分方針を明確化
  • 投資家との対話を通じて、期待される資本政策の方向性を把握

課題④:検討のリソース・体制不足

よくある課題

  • 検討のリソース・体制が不足している(49%の企業が課題として挙げている)
  • 社内での検討・調整に時間がかかる(35%)
  • 担当者レベルでの検討に留まり、取締役会レベルでの議論に至らない

課題を乗り越えた企業の取組み

  • IR専任部署の新設やIR担当者の育成
  • 経営企画、財務、IR、広報など関連部門の協力体制を構築
  • 取締役会で定期的に進捗報告を行い、経営層の関与を確保

投資家が評価する42の具体的な好事例

東証は2024年11月に「投資者の視点を踏まえた対応のポイントと事例(プライム市場編)」を公表し、42の好事例を紹介しています。企業規模別に、特に注目すべき事例をご紹介します。

【TOPIX Core30 & Large70】大型株の好事例

  • 旭化成(3407)は、CFOメッセージとしてPBR改善に向けた取組みをストーリー性を持って紹介しています。投資者からよく寄せられる問いに経営陣が回答する形式で、各取組みの意図が分かりやすく説明されています。また、取締役会の実効性評価において、売却・撤退を含む事業ポートフォリオ変革の重要性が社外取締役から語られるなど、実効性のあるガバナンスが確保されていることが窺えます。人財戦略や知的財産活動などの無形資産を企業価値向上にどのようにつなげていくのかも、わかりやすく説明されています。
  • 花王(4452)は、ROICと成長性の観点から事業ポートフォリオマネジメントを強化し、非効率事業の見直しと再編に着手しています。非効率事業の見直しに関する社内の判断基準を設定したうえで、定期的にモニタリングし、実際に事業譲渡などの見直しを実施しています。一時的に費用が膨らんでも、中長期的に企業価値を高めていくために必要な構造改革であり、ガバナンスが適切に機能発揮していると投資家から評価されています。
  • 三菱商事(8058)は、ステークホルダーとのエンゲージメントを統括するCSEO(Chief Stakeholder Engagement Officer)を設置し、市場との対話を一段と加速しています。部門横断的な社内体制を構築し、経営層が国内外の投資家やアナリストと積極的に対話を行うなど、トップマネジメントの強いコミットメントが感じられます。対話で得られた投資家の意見を経営層にフィードバックする仕組みも整備されています。
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は、ロジックツリーを用いてROE向上に向けた取組みの進捗状況を分かりやすく記載しています。また、PBRとROEの関係やTSR(株主総利回り)の推移について、グローバルな同業他社との比較分析を実施し、課題認識を明確に開示しています。
  • ANAホールディングス(9202)は、PBRが1倍を上回っていても、株価が伸び悩む現状を踏まえ、さらなる向上に向けた分析・検討を進めています。現状のバランスシートの課題認識を示すとともに、中長期に目指すバランスシートの方向性を明示。資本市場の目線を踏まえた株主資本コストに基づき、エクイティスプレッド目標を設定し、PBR2倍水準を目指すことを目標として掲げています。また、役員報酬制度に加え、従業員に対しても株式を付与することにより、企業価値向上に向けた社員の活躍を促進しています。
  • 富士通(6702)は、株主との価値共有の深化を目指し、業績連動型株式報酬の比率を引き上げるとともに、評価指標から連結売上収益を除き、新たにTSRを追加しました。投資者が重視する指標との連動が強まり、企業価値向上に向けた経営陣の強いコミットメントが感じられると評価されています。

【TOPIX Mid400】中型株の好事例

  • 出光興産(5019)は、東証の要請後いち早く現状分析や今後の方向性を開示したうえで、その後も継続的に議論を深め、ROE・ROIC目標の上方修正を実施しました。CAPMベースの資本コストと市場の期待リターンとの間には乖離があるという認識を提示し、ROE目標を8%から10%以上に引き上げ。事業ポートフォリオの転換による脱炭素事業・成長事業へのシフトを通じて、資本コストの低減にも取り組んでいます。中計期間中にもROIC目標を上方修正するなど、機動的なアップデートを実践しています。
  • 大林組(1802)は、株主資本コストについて、株式市場が求める水準が、自社で認識していた水準(CAPMで算出)を上回っていることを認識し、中計期間中であってもROEの目標値を引き上げました。資本効率性をより重視した方策に取り組む重要性を認識し、目標水準の引き上げやその実現に向けた取組みの見直しを行っており、株式市場と真摯に向き合う姿勢が評価されています。
  • 荏原製作所(6361)は、資本構成の最適化や事業運営上の長期リスク低減等により資本コストの低減に取り組むとともに、各取組みが企業価値向上にどう寄与していくかについてROICツリーを用いてわかりやすく説明しています。さらに、TSRを影響因子に分解したTSRロジックツリーを用いて、株主価値向上に向けた個別施策を提示。セグメント別にROIC-WACCスプレッドの分析・評価を実施し、セグメントごとのROICスプレッド拡大の施策を提示しています。
  • コンコルディア・フィナンシャルグループ(7186)は、複数モデルでの資本コストの算出、各種指標に関するヒストリカルの分析や同業他社との比較など、深度のある現状分析を行っています。企業価値向上に向けた取組みをロジックツリーを用いて記載し、取組みと企業価値向上の関係性を明確化。株主資本コストについて、CAPMに加えて株式益利回りに基づく算出も行い、認識する水準をレンジとして提示しています。投資者との対話実績や、主な意見を踏まえた対応状況についてもわかりやすく開示しています。
  • 日本特殊陶業(5334)は、企業価値向上やROIC向上に向けた取組みについて、ロジックツリーを用いて説明しています。特に注目すべきは、各事業ごとのハードルレートに対するスプレッドと売上高成長率により評価・モニタリングを行い、不採算・低成長であった事業には撤退含む再生計画を実行している点です。事業撤退ルールを設定し、実際に不採算事業の見直しを行っており、取組みの実効性が期待できます。
  • リコー(7752)は、中期経営戦略で掲げた企業価値向上に向けた各種取組みについて、四半期ごとの決算説明会においてCEO/CFOが進捗を報告しています。定量面だけでなく定性面も含めた進捗の開示が行われており、現状や今後の方向性が分かりやすいと評価されています。企業価値向上に向けて事業の「選択と集中」の加速を掲げ、低収益事業の撤退・売却を実際に進め、その進捗を具体的に開示している点も評価ポイントです。
  • アシックス(7936)は、資本効率向上に向けて政策保有株式の全売却に取り組むとともに、得られたキャッシュを成長投資や株主還元に充当する方針を開示しています。併せて、中長期目線の機関投資家や個人株主の取込み、資本コスト低減を目的として、自社株式を政策保有する株主に対して売却を働きかけ、自社株式の売出しを実施しました。グローバル投資家を積極的に取り込んでいこうという動きは先進的かつ好印象と評価されています。

【TOPIX Small】中小型株の好事例

  • 中部鋼鈑(5461)は、前年度の開示をベースとして株主とのコミュニケーションを図り、そこで得られたフィードバックを踏まえて、目標設定や取組みをブラッシュアップしています。開示を行ったうえで、株主・投資者と積極的にコミュニケーションを図りながら、目標設定や取組みを改善している好事例として紹介されています。この1年間で見ても、投資者との目線のあった内容に改善されており、同規模の他社にも参考になる事例です。業界特性を踏まえて資本コストを抑えるために必要な取組みを分析し、具体的な施策を推進している点も評価されています。
  • SWCC(5805)は、従来からROIC経営を推進しており、取組みの進捗を踏まえて中計で掲げた目標を上方修正するなど、着実に変革が進展しています。ROIC経営を社内に浸透させるため、社内報で各部署ごとの分かりやすい指標と目標数値を掲げ、社員一人一人が自分事として取り組める仕組み・環境づくりを推進。政策保有株式の売却により得た資金も含めて、将来獲得するキャッシュを成長投資や株主還元にどう配分していくのか、キャッシュ・アロケーション方針を具体的に提示しています。
  • 三陽商会(8011)は、PBR改善策として収益性向上に向けた施策と併せて、IR・SR活動の更なる強化を掲げています。IR専任部署の新設やIR担当者の育成など、IR/SR活動の体制強化や情報開示の拡充に取り組み、市場と向き合う姿勢に変化が見られます。対話の実施状況や取締役会に対するフィードバックの状況についてわかりやすく開示するとともに、対話で得たインプットとその後の対応状況を開示しており、経営陣の強いコミットメントを感じると評価されています。
  • 東亜建設工業(1885)は、PBR向上に向けたアクションプランの一環として、IR活動の強化に向けて専任部署を新設するとともに、株主・投資者からのフィードバックを踏まえて、英文開示を含む情報開示の充実に取り組んでいます。投資家との対話で得られた意見について取締役会に定期的に報告し、施策の見直しに反映。経営層がコミットして株主・投資者との向き合い方を改善しようとしていることが伝わり、今後の企業価値向上に向けた取組みの加速が期待できると評価されています。

【深掘り考察:好事例企業に共通する5つの特徴】

これらの好事例企業を分析すると、5つの共通点が浮かび上がります。

第一に、「継続的なアップデート」を実践しています。

出光興産、大林組、中部鋼鈑など、一度開示して終わりではなく、市場環境の変化や投資家からのフィードバックを踏まえて、目標や取組みを機動的に見直しています。特に、中計期間中であっても目標を上方修正する姿勢は、株式市場と真摯に向き合う姿勢として評価されています。

第二に、「取組みと目標の因果関係を可視化」しています。

荏原製作所のROICツリー・TSRロジックツリー、三菱UFJフィナンシャル・グループのロジックツリーなど、各取組みがどのように企業価値向上に繋がるのかを視覚的にわかりやすく説明しています。これにより、投資家との対話が深まりやすくなります。

第三に、「不採算事業の見直しを実行」しています。

花王、日本特殊陶業、リコーなど、低収益事業からの撤退・売却を実際に進めている企業が評価されています。成長投資や株主還元だけでなく、「選択と集中」の本気度が問われています。

第四に、「経営トップのコミットメント」が明確です。

三菱商事のCSEO設置、旭化成のCFOメッセージ、ANAホールディングスの役員・従業員への株式付与など、経営陣が自ら企業価値向上にコミットする姿勢を示しています。投資家は、担当者レベルではなく経営トップの関与を重視しています。

第五に、「対話を経営に反映する仕組み」を構築しています。

神戸製鋼所、コニカミノルタ、三陽商会など、投資家との対話で得られたフィードバックを取締役会に報告し、施策の見直しに反映する仕組みを整備しています。対話を成長ドライバーとして活用しようとする姿勢が伝わります。

2026年のCFO・IR実務チェックリスト

「次の壁」を越えるための7つの問い

以下の問いに対して、自社の取組みを点検してみてください。

【現状分析・評価】

  1. 自社の株主資本コストは、CAPMだけでなく、投資家の期待リターンも考慮しているか?
  2. PBRが1倍を上回っていても、さらなる向上に向けた分析・検討を行っているか?
  3. バランスシートの効率性(余剰現預金、政策保有株式、低収益資産)を点検しているか?

【取組みの検討・開示】

4. 各取組みがPBR向上にどう繋がるのか、ロジックツリー等で可視化しているか?

5. 不採算事業の縮小・撤退について、具体的な判断基準と実行計画を策定しているか?

6. 目標設定は株主資本コストを上回る水準か?達成時期は明確か?

【株主・投資者との対話】

7. 投資家からのフィードバックを経営に反映し、取組みをアップデートする仕組みがあるか?

2026年に優先的に取り組むべきアクション

【3月末まで】

  • 自社の取組みを「投資者の目線とギャップのある事例」と照合し、課題を特定する
  • 資本コストの算出方法を見直し、市場期待水準との乖離を把握する
  • バランスシートの効率性を点検し、改善余地を特定する

【2026年上半期中】

  • 開示内容をアップデートし、投資家からのフィードバックを反映する
  • 不採算事業の見直しに関する方針・判断基準を策定・開示する
  • IR体制を強化し、投資家との対話機会を増やす

【2026年中】

  • 投資家との対話で得られたフィードバックを取締役会に定期報告する仕組みを構築する
  • 取組みの進捗状況を四半期ごとに開示し、継続的なアップデートを実践する
  • 経営陣の関与を強化し、企業価値向上へのコミットメントを示す

プライム市場特有の課題:グローバル投資家対応

英文開示の義務化への対応

プライム市場の上場会社は、2025年から決算情報及び適時開示情報について日本語と同時の英文開示が義務化されました(企業行動規範の遵守すべき事項)。英文開示は日本語の開示の参考訳と位置づけられていますが、グローバル投資家との対話を促進するうえで重要な取組みです。

好事例企業の多くは、英文開示を単なる義務対応ではなく、海外投資家との対話機会を増やすための戦略的な取組みと位置づけています。

グローバル同業他社との比較

三菱UFJフィナンシャル・グループのように、PBRやROE、TSRについてグローバルな同業他社との比較分析を実施し、自社の立ち位置を明確化することも、海外投資家との対話を深めるうえで有効なアプローチです。

海外IRの強化

好事例企業の中には、海外投資家向けの説明会やロードショーを積極的に実施し、グローバルな投資家基盤の拡大に取り組んでいる企業もあります。アシックスのように、中長期目線の機関投資家や個人株主の取込みを意識した資本政策を展開することも、企業価値向上に寄与する取組みです。

まとめ:「開示」から「実行」へ、「理解」から「経営」へ

プライム市場の「資本コストや株価を意識した経営」は、開示率9割超という「量」の段階から、取組みの「質」が問われる段階に移行しています。

投資家が求めているのは、以下の3点に集約されます。

  1. 抜本的な取組みの実行:成長投資や株主還元だけでなく、不採算事業からの撤退や成長事業への資源配分といったドラスティックな経営判断
  2. 継続的なアップデート:市場環境の変化や投資家からのフィードバックを踏まえた、目標や取組みの機動的な見直し
  3. 経営トップのコミットメント:担当者レベルではなく、経営陣が自ら企業価値向上に関与し、対話に参加する姿勢

東証が公表した42社の好事例は、これらの期待に応える取組みを実践している企業です。自社の取組みを点検し、「次の壁」を越えるためのヒントとして活用してください。

2026年は、「開示」から「実行」へ、「理解」から「経営」へと移行する重要な年です。投資家との建設的な対話を通じて、持続的な企業価値向上を実現していきましょう。


※本記事は2026年1月時点の情報に基づいて作成しています。最新の制度内容や事例集については、JPX公式サイトをご確認ください。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

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